もう、自分で覚えておかなくていい——私がMemoketをつくった理由

録音操作の更新:現在のGemでは、録音ボタンを1秒間長押しすると録音が始まり、1回押すと停止します。この記事では、執筆当時の表現をそのまま残しています。

公開日:2026年8月7日 読了時間:約6分著者:Elisa Lu, Memoket共同創業者兼最高執行責任者
もう、自分で覚えておかなくていい——私がMemoketをつくった理由

先週、ポッドキャスト「TechKnowledgy」でBrett Levyとお話ししました。話題は、この15か月間、私の生活の中心となってきたMemoketです。その回のタイトルは「I don't need to remember(もう、自分で覚えておかなくていい)」。正直、この言葉に、私がつくろうとしてきたもののすべてが詰まっています。

すべてが始まった頃の話をさせてください。

すべてのきっかけとなった、もどかしさ

私はテクノロジーが大好きで、2人の男の子の母親でもあります。これまで四つの大陸で暮らし、働いてきました。仕事ではいつも、現実の問題を解決するものをつくってきました。でも長い間、一つだけ、頭から離れない問題があったのです。

始まりは、単純なもどかしさでした。AIツールは質問に答えることが驚くほど上手になっているのに、画面の外で起きたことは、ほとんど忘れてしまう。一つひとつの会話が、独立した出来事として扱われていました。顧客に10回インタビューすれば、できあがるのは10件の別々の要約です。そのすべてを読み、全体の話をつなぎ合わせるのは、結局、自分でした。

核となるのは、会議を一つずつ要約するだけの考え方ではありません。

そのとき、気づきました。問題は、AIが十分に賢くないことではない。文脈・背景情報を持っていないことなのだと。それ以前に何が起きたかを知らない。数日、数週間、数か月にわたって、会話がどうつながっているかを知らない。それは、ページ全体を一度も見ずに、一文ずつ読んで本を理解しようとするようなものです。

母の診察でのこと

そのもどかしさが身近な問題になったのは、母が以前より頻繁に診察を受けるようになったときでした。診察を終えると、母は医師の話を伝えようとしてくれました。でも、すべてを一言一句繰り返すことはできません。大切な細部が抜け落ちました。聞いておいてほしかったことも、聞けないままでした。

そこで、診察での会話を録音してもらうことにしました。

その経験で、はっきりしたことがあります。人生で特に大切な会話の多くは、画面から離れた場所で交わされるということです。病室で、車での移動中に、コーヒーを飲みながら、廊下で。そして私たちは、それを忘れてしまいます。大切に思っていないからではありません。人間だからです。すべてを覚えておくことはできません。

運転中に、投資家から電話がかかってくることもあります。その会話を録音できたらと思っても、スマートフォンに手を伸ばして命を危険にさらすつもりはありません。もっとよい方法があるはずでした。

構想:現実世界とAIをつなぐ、文脈・背景情報の基盤

そこから、Memoketの構想が生まれました。私たちがつくっているのは、私が「現実世界とAIをつなぐ、文脈・背景情報の基盤」と呼んでいるものです。

考え方はシンプルですが、大きな目標を持っています。現実の会話を、自然に、邪魔をせず、必要なときに記録する。そして、AIが実際に扱える、整理された文脈・背景情報に変えるのです。ばらばらの要約でも、つながりのないメモでもありません。時間とともに、より賢くなっていく、つながりを持った生きた会話の記録です。

ある人に2回目に会うとき、Memoketは、初めて会ったときに何を話したかを覚えています。創業者として10人の顧客にインタビューするなら、10件の別々のレポートを読む代わりに、ソフトウェアが回答を比較してくれます。関係、意思決定、議論がどう変わってきたかをたどり、つなぎ直すのです。現実の生活は、そうやって動いているからです。

Memoket Gemをご紹介します

世界最軽量のAIリストバンド——存在を感じさせないデザインで、大切なことを覚えておくために。

この構想を実現するには、ハードウェアをつくる必要がありました。ソフトウェアだけでは足りなかったのです。最も大切な会話は、デスクを離れているときに交わされるからです。

存在を感じさせないデザイン

超軽量

わずか約11 gで、角砂糖4個よりも軽量です。アルミニウム合金を使用し、重さを抑えながら強度を確保しています。

一日中、身につけられる

バッテリー駆動時間は最大20時間。朝の会議から夕方の散歩まで、一緒に過ごせます。

2通りの装着方法

単独のリストバンドとしても、Apple Watchのすぐ隣にも装着できます。Series 1からUltraまで、すべてのモデルに対応しています。

ワンプッシュで録音

1回押すだけで、会話を記録します。スマートフォンを慌てて探す必要も、その場の会話を中断する必要もありません。

Wi-Fi同期

録音データは自動で転送され、整理された文脈・背景情報に変える準備が整います。

単なるメモを超え、文脈・背景情報を蓄えるために

Memoket Gemの違いは、ハードウェアだけではありません。ボタンを押した後に、何が起きるかです。

ばらばらの要約をもう一つ増やす代わりに、MemoketのAIは会話同士をつなぎ合わせます。先週、先月、別の相手との別の会議で何が話されたかを覚えています。自分で情報をつなぎ合わせなくても、代わりにやってくれるのです。

すでにお使いのツールとも連携します。

◆Claude◆Notion◆Slack◆Google Calendar

設計の段階から、プライバシーを大切に

個人的な会話を録音することが、どれほど慎重さを要するかは理解しています。だからこそ、決めるのは常にユーザーです。何をアップロードするか、何を分析するか、何を非公開のままにするかを、自分で選べます。ユーザーが許可しない限り、何も行われません。

なぜ、ハードウェアなのか?

ときどき聞かれます。なぜ物理的なデバイスをつくるのか。アプリだけではいけないのか、と。

答えは、人生で特に大切な会話が、いつも画面の近くで交わされるわけではないからです。親と一緒にいる病室で。投資家から突然電話がかかってきた車の中で。将来のビジネスパートナーになるかもしれない人との夕食の席で。そうした場所で交わされるのです。

すでに3人に1人が、スマートウォッチやリストバンドを着けています。身につけていれば忘れにくく、落としにくく、一度押すだけで移動中でも録音できます。ハードウェアには、多くの時間と細かな調整が必要です。それは、身をもって知っています。それでも、私たちには絶対に必要だとわかりました。いつもそこにあって、決して邪魔にならない、形のあるデバイス。その存在によって、日々の会話を記録することが、場に割り込む行為ではなく、自然なことになるのです。

私たちが目指す、その先の世界

Memoketを始めたのは、次の世代のAIは、本当に身につけられる、よく考えられたハードウェアを通じて、現実世界にもっと自然に溶け込むべきだと信じていたからです。

今のAIは、画面の中では非常に優秀です。文章を書き、コードを書き、分析もできます。でも、デスクを離れた瞬間、AIには何も見えなくなります。現実の生活の文脈・背景情報が、すべて抜け落ちてしまいます。あなたの世界を実際に形づくる会話、意思決定、人との関係です。

私たちが埋めようとしているのは、その隔たりです。Memoketは、文脈・背景情報を通じて、現実世界とAIをつなぐ橋をつくっています。AIの声を大きくしたり、速くしたりするのではありません。これまで持っていなかったものを与えるのです。現実に交わした会話の、生きた記憶を。

これからのこと

まもなく発売を迎えます。これ以上ないほど楽しみで、正直なところ、少し怖くもあります。ハードウェアをつくるのは難しいことです。新しいカテゴリーをつくるのは、もっと難しい。それでも、大切な会話を残せなかったという人、3か月前に医師が何と言ったか思い出せたらという人、読む時間を取れないままの顧客インタビュー10件をフォルダーに抱えている人と話すたびに、わかるのです。私たちは、意味のあるものをつくっているのだと。

AIの未来は、もっと賢い答えだけではありません。文脈・背景情報を、もっと賢く扱うことです。そして、その文脈・背景情報は、現実の世界から始まります。画面から離れて過ごす瞬間、忘れたくない会話から。

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